原始星周辺でみられる7ミクロン吸収は2つのタイプが知られている。すなわち、一つはW33Aに見られる半値幅の狭いもの、もう一方はMonR2♯2に見られる半値幅の広いタイプのものである。ピークの波長位置は観測データよりやや短波長に位置する。7μmピークが炭酸塩で説明できれば、原始星の周辺では炭酸ガスが存在すること、マグネシウムは容易に炭酸塩に変われる化学種の微粒子として存在していることを示唆することになる。 反応容器として、ガスが導入できる小型真空容器を製作した。この容器の内部に試料粉末とWC、ステンレスなどの球を入れ、上下に振動させ、擂潰しながら導入した炭酸ガスと反応させた。この結果、マグネシウム酸化物(マグネシウムリボンの燃焼により合成したもの、および市販の試薬)は非常に炭酸塩になりやすいことがわかった。マグネシウム炭酸塩は水酸化物、酸化物を含む複雑な組成をとる。水酸化炭酸マグネシウムを加熱変成し、その赤外スペクトル変化をみると、7μm付近に2つの吸収極大をもつブロードなフィーチャーを示した。一方、結晶性のマグネシウム炭酸塩(マグネサイト)は、6.8μmに吸収極大をもつが、スペクトルの半値幅は狭い。これらのフィーチャーを観測データとfittingを行った。 炭酸化する原料としての酸化マグネシウム微粒子を合成するため、アーク放電電源として溶接電源を購入した。これを用いて、部分酸化したマグネシウムの微粒子をつくる装置を完成させ、微粒子をつくり、その炭酸塩化の実験を行う予定である。
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