平成7年度では、まず、等質空間上の量子論を構成する際に、Landsman・Lindenによって発見された背景場としてのYang-Mills場(等質空間上の正準接続canonical connection)の幾何学的意味と、またそのBerry位相などのgeometric phasesとの関連を調べた。結果は、従来の代数的量子化による方法で生じる等質空間上のYang-Mills場は量子化の基礎となる対称性の要請によって規定されており、正準接続は自然な幾何学的接続として現われることが判明した。そして、これが多くの場合geometric phasesに現われる接続とも同一であることを示した。この結果はJourn.Math.Phys.に発表した。 また一方、この接続がFeynman流の経路積分の直観的な考えに基いてどの様に現われるかを研究した。このため、従来より知られたS^1の場合の経路積分の構成法を等質空間上に拡張し、実際そこでholonomyとしての正準接続がFeynman積分核に現われることを明らかにした。この仕事はMod.Phys.Lett.A.に発表した。 当初の研究計画の内、平成7年度分についてはFeynman流の経路積分を等質空間上に構成する、という点は計画通り達成できた。また、その幾何学的意味とgeometric phasesとの関連を明らかにできた。今後の課題として、Feynman流の経路積分の構成を等質空間上のものからさらに拡張し、より一般の多様体あるいは場の理論に応用することを考えたい。
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