研究概要 |
Parisi-Wuにより提唱された確率過程量子化法では,いわゆる「仮想時間」に対する確率過程の熱平衡極限として量子論を与えている.本研究は,非有界の古典的作用を持つ系(bottomless system)など従来の方法では取り扱うことのできなかった系を非平衡確率過程を用いることによって量子化する可能性を追究するものである.本年度では,非有界の古典的作用を持つ系を非平衡確率過程で取り扱うというこれまでの取り扱の拡張に努めるとともに,引き続き関連した分野での研究を展開した.具体的には1kernel自由度付きの確率過程で得られた厳密解の漸近形を求めるとともに,簡単な系をモデルに選んで数値計算を実行した.その結果,確率分布関数は有限領域内で規格化された測度e-^sを極めて良く近似していることが数値的にも確認された.2 これまでに得られたFokker-Plank方程式の厳密解は,統計力学模型(自由度0)に対してのみである.今回は,特に多自由度系への拡張を試みた.その結果,まだ完全な一般化とは言えないものの,kernelの平方根に相当するmetricを適当に選ぶことで同様の取り扱いが可能であり,多自由系に対してもFokker-Planck方程式の厳密解を得る見込みが見出された.今後の課題として,場の理論への拡張,さらには重力場への応用を目指したい.3kernel自由度付きLangevin方程式に基づく数値シュミレーションで見出されているexcursion phenomenaの理論的解析を試みた.(金長)4非平衡確率過程の臨界現象への応用を試みた.特に,平衡状態に達するまでの過渡的な現象から臨界指数等,物理的に有用な情報が取り出せることを指摘した.(岡野)5確率過程量子化法の枠内で遷移確率振幅を導出する手法に対して,その摂動論の確立,および非摂動領域への拡張を試みた.
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