今年度はまず、中国地方東部の山崎断層地域についての解析を行った。断層周辺の水平150km、深さ80kmの広がりの領域を1辺10kmのブロックに分割し、京都大学防災研究所鳥取観測所で得られた地震波形データ(5観測点、105地震、496波形トレース)を用いたコーダ・エンベロープのインバージョン解析を行った。その結果、深さ0-20kmの上部地殻内全般にわたって山崎断層に沿った散乱体分布が認められた。詳しくみると、断層中央部の深さ10-20km付近、および断層東端部の深さ0-10km付近に強い散乱体の分布が見い出された。このうち、前者については1984年のM5.6の地震の震源域(余震域)にほぼ一致することが注目される。また、断層の北側一帯(深さ0-20km)は全体的に散乱が弱く、微小地震の低活動域と対応すると考えられる。さらに空間分解能を上げるために、断層周辺での臨時地震観測点のデータを加えた解析を行った。その結果、断層中央部の深さ5-10km付近にも新たな散乱体分布が見い出された。現在、得られた解析結果について、この地域の微小地震分布、重力異常構造、地質構造、3次元速度構造等との比較による詳細な検討を行っているところである。 この他、中国地方東部の吉岡・鹿野断層地域についても、鳥取観測所で得られた波形データの解析を行いつつある。また、六甲断層系については兵庫県南部地震(1995年1月17日、M7.2)の余震データを用いて、この地震の震源域周辺での地殻不均質構造に注目した解析を行いつつある。
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