前年度までに、西南日本内帯から中部日本かけての幾つかのの活断層(福井地震断層、山崎断層)、および火山(御嶽山、白山、日光白根山)周辺地域に対してコーダ波形インバージョン解析を行った。9年度は野島断層-六甲断層系において同様の解析を行うとともに、得られた地殻内不均質構造について3次元速度構造、微小地震分布、活断層分布等との比較による総合的な考察を行った。 その結果、本研究課題において開発されたインバージョン解析手法は、地殻不均質の推定に有効であることが分かり、以下のような特徴が見いだされた。(1)火山体直下の深さ0-20kmには強い不均質が見いだされ、それらは主にインピーダンスコントラストの強い反射面と考えられる。(2)この反射面の3次元的な分布が、通常の反射法解析と比べてより詳細にイメージングされた。(3)御嶽山においては、火山体の浅部0-7kmにもほぼ垂直な不均質分布が確認された。(4)活断層沿いの深さ0-20km付近には強い散乱体が分布する。(5)福井地震断層周辺においては、地震空白域と散乱強度の弱い領域が空間的によく対応する。(6)野島断層-六甲断層系においては、1995年兵庫県南部地震の本麓断層面直下の深さ20-30kmに散乱の強いゾーンが認められた。これらは下部地殻に対応すると考えられる。(7)さらに、兵庫県南部地震の震源(破壊開始点)直下には特に強い不均質領域が見いだされた。 以上のように、活断層、火山周辺の地殻内には特徴的な強い不均質構造が存在することが分かった。この不均質構造は上記(6)、(7)に示すように大地震の発生にも関係することが予想され、今後のさらなる解明が必要である。
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