地球磁気圏の低エネルギー(0.1-10keV)プラズマ粒子の運動を磁力線に沿って電離層面上へ投影し、磁気圏・電離圏結合の2層の2次元数値シミュレーションモデルを作成した。このシミュレーションによって、観測から同定された巨視的(>200km)沿磁力線電流分布(領域1・2)を再現した。この結果から、我々は「内部磁気圏では低エネルギープラズマが放射線帯の外側にトーラス状に配位すること」を予測している。この配位は交換型不安定を引き起こして、朝側ディフューズオーロラにオメガバンドを形成すると考えられるが、常に不安定になるわけではなく、安定性にはプラズマシートからローブにかけての磁場強度の増大による、(プロトンの)東向き磁気ドリフトが重要な役割を果たすと思われる。シミュレーションによって磁気圏低エネルギープラズマトーラスの安定性を調べた結果、磁気ドリフト逆転層が存在すれば、通常トーラス全体は安定に存在できるが、サブストーム回復期におけるようにトーラス粒子が磁力線閉領域内に集中して分布するときには交換型不安定になることが判った。(この事実は、オーロラメガバンドが回復期に発展することに対応すると考えられる。) さらに、平成8年度の進展状況及び新たに得られた知見は以下の通りである。 1.昼間側磁気圏では、低緯度境界層のプラズマ圧力勾配が、トーラスの極側境界の交換型不安定を抑制できることが、安定性の線型理論からわかった。 2.「磁気的開閉領域界面の磁気圏内対流によるゆがみ」を考慮し、粒子の開領域への流出及び開領域からの流入の効果や異常拡散を取り入れたシミュレーションモデルによって、トーラス及び領域1・2の沿磁力線電流系の同時的、準定常形成を再現した。 (磁気ドリフトベクトルの分布図の作成は進行中であるが、まだまとまった結果は出ていない。)
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