研究概要 |
地球磁気圏の低エネルギー(1-10keV)プラズマ粒子の運動を磁力線に沿って電離層面上へ投影し、磁気圏-電離圏結合の2層の2次元数値シミュレーションモデルを作成した。本研究では、より現実的なモデルとして、「極冠域でのプラズマ流出」,「夜側オーロラオーバルへのプラズマ流入」,「磁気圏尾部でのプラズマ粒子の加速」,「粒子の磁場に垂直な方向の(異常)拡散」等のプロセスを磁気圏-電離圏結合のシミュレーションモデルに取り入れて、(惑星間空間磁場が南向きの場合の)定常的なプラズマトーラス(オーロラオーバル)の形成及び領域"1,2"沿磁力線電流発生現象を再現した。特に、夜側の粒子流入境界付近のスケール(緯度幅)の小さい電流構造も再現できるようにするため、空間分解能を上げた。 本研究(特に今年度)の具体的な進展状況及び新たに得られた知見は以下の通りである。 1.統計的磁気圏磁場モデルを使って、(南向き惑星間空間磁場の場合の)磁力線の(電離層面上の)"開-閉境界線"の接線は、磁気ドリフト方向とは一貫したずれを持つこと が判った。これは、従来の我々の理論的予測を裏付けるもので、磁気圏内プラズマ対流の影響による"境界面のゆがみ"と解釈できる。 2.惑星間空間磁場が南向きの場合を想定して、シミュレーションモデルに"開-閉境界面のゆがみ"を境界条件として導入し、領域"0+1+2"の定常的な沿磁力線電流系を再現した。この合成電流系は、人工衛星EXOS-Dで観測されるものと基本的に一致し、シミュレーションモデルの妥当性が確かめられた。同時に、(夜側)プラズマ粒子流入領域での領域"0"対電流の発生原因が、比較的低高度で起こるプロトンの異常拡散によるプラズマ分極であることが、ほぼ明らかになった。[RASC電波科学計算機実験シンポジウム;1998]
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