研究概要 |
1.分光学的データの分かっている炭素、窒素および酸素の種々の化合物間の同位体交換反応の平衡定数を、量子統計力学に基づいて温度を50Kから2000Kまで変えて計算したところ、多くの反応が異常同位体効果を示し同位体比異常を起こすことが見いだされた。例えば、C_2分子はSC、RhC、IrC等との反応で炭素同位体比異常を、NH分子はNA1,NC1、NBr等との反応で窒素同位体比異常を、そしてOHはLiO、MgO、FeO等との反応で酸素同位体比異常を起こすことが明らかになった。 2.熱力学的同位体効果算定用CACheシステムを使用して、種々の化学種の基準振動数を分子軌道法で計算して同位体交換平衡定数を計算し検討したところ、適当なハミルトニアンを用いれば正確な結果が得られこのシステムが同位体効果の計算に有効であることが分かった。 3.同位体交換反応の平衡定数とその平衡に含まれる分子の力の定数との関連を理論的に調べたところ、力の定数がある範囲の値をとるときに異常同位体効果を示し同位体比異常を起こすことが明らかになった。 4.昨年度と本年度の研究結果から、「同位体比異常は同位体交換平衡でも生じることがある」と考えられる。従って「同位体交換平衡に伴った同位体分別はいわゆる質量依存である」という定説は修正する必要がある。 5.平成8年度の研究結果の一部は、1996年度日本地球化学会年会、日本原子力学会1996年秋の大会、および第18回Grain Formation Workshopで発表された。
|