研究概要 |
新化合物(Sb_4O_5)(ReO_4)_2の構造を単結晶X線構造解析により決定した。その結果,この化合物が,(Sb_4O_5)^<2+>という組成を持つカチオン性の層の間に,ReO_4が入った三斜晶系の結晶構造を持つことがわかった。この化合物を構成する3価アンチモンは,3つの酸素と結合して3角錐型のユニットを作り,このユニットが酸素を共有して連結することにより,やや複雑なSb_4O_5一重層が形成されている。この層からは,アンチモンの孤立電子対が上下に突き出ているため,ReO_4-イオンは層に近づけず,ReO_4-イオンと酸化アンチモン層とは,静電的な力によって結合している考えられる。したがって,酸化アンチモン層間のイオンは,構造化学的に見ると,他の陰イオンと置換可能と予想される。そこで,カチオン性酸化アンチモン層間を反応サイトとする陰イオンの交換反応を種々の陰イオンについて試みた。しかし,種々の陰イオンを含む酸を反応させたところ,酸化アンチモン層の分解が起こり,陰イオンの交換には現在のところ成功していない。そこで,アンチモン層に,酸素と強く結合する金属を導入し,アンチモン層を強化するという方針で,種々の金属の導入を検討した。しかし,反応を試みた金属酸化物はすべてアンチモン層とは独立に化合物を形成し,混合金属酸化物層の形成は見られなかった。これは3価のアンチモンが独自の配位形式を持つため,他の金属とは立体化学的に混ざることが困難なためであると結論した。これらの研究の過程で,レニウム-アンチモン混合酸化物系に新しい相が存在することが発見され,この相を現在同定中である。
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