研究概要 |
(Catecholato) (1, 10-phenanthroline) copper (II) (以下Cu (cat) (phen)と略記)について、延伸高分子膜法による偏光吸収スペクトルの測定を行い、各電子帯の分極方向を決定した。また、Cu (cat) (phen)の電子スペクトルを(catecholato) (ethylenediamine) copper (II)および(oxalato) (1, 10-phenanthroline) copper (II)のスペクトルと比較し、各電子帯の起源について考察した。その結果、例えば、延伸PVA膜中で観測されるCu (cat) (phen)の331, 308, 275.0, 267, 233および227nm帯は1, 10-phenanthroline (phen)骨格に局在化した遷移であり、295および210.0nm帯はcatecholato (cat)骨格に局在化した遷移によるものであることがわかった。実測の209nm帯は、cat骨格に局在化した遷移とphen骨格に局在化した遷移の量子論的な混合によるものである。このことは、Cu (cat) (phen)分子内で独立的に存在するcatおよびphen骨格のπ電子系が配置間の相互作用を通してかなり混ざり合っていることを示している。なお、MO計算によるとππ^*_4(LUMO+1←HOMO、^1A_1←^1A_1)およびππ^*_5(LUMO+1←HOMO、^1B_1←^1A_1)遷移はcat骨格からphen骨格への配位子間CT遷移であるが、対応する吸収帯は観測されなかった。この他に、(2, 2'-bipyridine) (catecholato) copper (II) (Cu (cat) (phen))の電子構造および電子遷移の性格について研究した。この分子の場合には、322nmにcat骨格のπ電子系からbpy骨格への^1A_1←^1A_1型の配位子間CT遷移(HOMO←LUMO)に基づく吸収帯が観測された。このことは、分子内に独立的に存在するcat骨格とphen骨格のπ電子系が直接的に相互作用していることを示している。
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