研究概要 |
ADPの重合体、PolyA(Polyadenylicacid)はRNAの一種で細胞の中でPNPase(Polynucleotidephosphorylase)により、形成される典型的な生体高分子である。このPolyAの酵素的重合は陰イオン性界面活性剤、AerosolOT逆ミセル溶液のwater poolの中で開始し、まもなく酵素とともに沈殿し、長期間その酵素の機能を保持し続けることを我々は報告した(J.Am.Chem.Soc.,116.,7541(1994))。この研究ではガラスに付着して長期的に酵素機能を発現する機構を速度論、電気泳動などにより検討し、そのナノ構造をAFMで観察した。 その結果、以下の点が推測された。PolyAはAOT,酵素とともに巨大な複合体(半径200nm)を形成し、この巨大化したPolyAはPolyAとAOTの負電荷同士の反発で溶液系からはじきだされ、ガラス表面に酵素、AOTとともに吸着すると推測された。逆ミセル系の疎水的環境と、ガラス表面とPolyAの親和性もこの現象を促進させている。この沈殿した微粒子の中では酵素は活性を保持し続けており、AFMにより時間とともにPolyAが堆積して成長していく過程が直接観察された。沈殿したPNPaseの活性発現には酵素のまわりに存在するPolyAが重要な働きをすること、疎水的環境に加えて、陰イオン性の界面活性剤も重要な役割を果たしているであることも判明した。AFMで観察された成長していく凝集体はまさにガラス表面で機能しているナノ構造をもつ生体高分子-界面活性剤分子集合体に相当する。以上の結果は油のなかでの酵素的RNAの合成を化学工学的に発展させる可能性を示唆するものである。
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