研究概要 |
1)Sodium Bis(2-ethylhexyl) Sulfosuccinate(AOT)逆ミセル及び可溶化された水の動的変化をNMRにより検討し、不明であった水の少ない状態のAOT逆ミセル及び水の構造を明らかにした。さらにFreeze-fracture電子顕微鏡、Cryo-電子顕微鏡によりAOT逆ミセルを観察した。その結果、この研究において逆ミセルの直接観察に成功するとともに、界面活性剤に対して水の割合を増加していくと、逆ミセルが集合して、フロックを形成することを見い出した。 2)AOT逆ミセルでADPの重合体,poly(A)はPolynucletide phosphorylase(PNPase)によりMg^<2+>イオン共存下、ガラス試験管の中で開始させると、生成されたpoly(A)とともに酵素は沈殿し、沈殿した状態で長期間その酵素の機能を保持しつづけた。この機構を電気泳動、反応速度論などにより検討し、そのナノ構造をAFMで観察した。 3)PNPaseによるADPの重合化をFe^<3+>イオン存在下で試みた。その結果、AOT逆ミセルでは重合反応は全く進行しなかったが、エチレンオキサイド系非イオン逆ミセルではMg^<2+>イオン共存下に比べ2倍以上の収率が得られた。さらに温度をあげると、poly(A)は沈殿し、酵素活性も保持された。 4)酵素触媒を用いないで、金属イオンと陽イオン性逆ミセル界面の触媒により、ADPの重合化を試み、現在、キャピラリー電気泳動により検討しつつある。 以上結論として逆ミセルを用いた核酸合成は今後化学工学の分野においてばかりでなく、生命の起源のモデルとしても興味深い展開が期待される。
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