本研究では、ベンザインを温和な条件下で高効率に発生させるため、超脱離性のPhI^+基とフッ素アニオンにより容易に開裂するシリル基を有する[o-(トリメチルシリル)フェニル]ヨードニウムトリフレート(1)を構築し、温和な条件でしかも100%発生するという超効率変換の条件を確立し、広範な有機合成反応を開発することを目的とする。 1.ベンザイン発生剤である[o-(トリメチルシリル)フェニル]ヨードニウムトリフレート(1)の合成の最適化を検討した。ヨウ素反応剤[PhI(OAc)_2-2TfOH]を用いると、88%の収率で1が得られたが、新たに超原子価ヨウ素反応剤[PhIO-TfOH]およびPhI(OTf)OI(OTf)Phを用いると、収率が91%および98%と向上することがわかった。このように、定量的にベンザイン発生剤1を合成する方法が確立できた。 2.ベンザインを発生させる方法としてベンザイン発生剤1とBu_4NFを反応させた。発生したベンザインはフラン、アントラセン、ジフェニルイソベンゾフラン、テトラフェニルシクロペンタジエノンにより定量的に捕捉され、ベンザインの100%発生・100%捕捉の超効率合成法を開発できた。本反応は、従来のベンザイン発生剤と比較すると極めて高効率の反応剤でしかも中性穏和な条件下で使用できるという特徴があり、優れたベンザイン発生剤であると結論できる。 3.また、新規な反応性超原子価ヨウ素反応剤を開発し、官能基を有するアルケニルヨードニウム塩およびアルキニルヨードニウム塩を合成する方法を見いだした。
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