本研究では、超脱離性のPhI^+基とフッ素イオンにより容易に解離するシリル基を有する[o-(トリメチルシリル)フェニル]ヨードニウムトリフラートを構築し、超効率ベンザイン変換プロセスを用いる温和で広範な有機合成法の開発について検討した。 (1)ベンザイン発生剤である[o-(トリメチルシリル)フェニル]ヨードニウムトリフラートの合成の最適化を検討した。高反応超原子価ヨウ素反応剤を開発し、高収率でベンザイン発生剤を合成する方法を確立した。 (2)ベンザインを発生させる方法として、Bu_4NFやKFを用いることにより室温条件下で容易にベンザインが発生することを見出した。 (3)発生したベンザインはフラン、イソベンゾフラン、アントラセン、シクロペンタジエノン等によりほぼ定量的に捕捉され、100%発生・100%捕捉の超効率変換プロセスが可能となった。 (4)本研究で開発したベンザイン発生剤は、室温・中性条件で利用できるため、不安定なアジド類、チオベンゾフェノン類と付加環化反応し、高収率で複素環化合物が得られることを見出した。このことより、本反応剤は不安定な基質との反応にも適していることが判明した。 (5)置換基を有するベンザイン発生剤を合成し、単一のベンザインが発生することおよび従来のベンザイン発生剤よりも高い選択性があることも見出した。
|