研究概要 |
本研究計画初年度の研究の概要は以下の通り。 (1)低い仕事関数を有する固体表面の探索: (a)文献検索(藤井)の結果、(1)LaB_6,(2)(Sr,Ba)CO_3,(3)(Ca,Sr,Ba)CO_3が仕事関数(ψ)が小さく負イオン化型検出器に適した固体表面であると考えられた。これに基づき、(b)熱電子法による仕事関数の測定(岸)、(c)キャリヤ-ガス(He)下の仕事関数変化の測定(岸)、(d)固体表面の熱安定性(岸)の検討を行った。その結果、(1)LaB_6は熱的に安定であるが仕事関数がψ=2.7eVとやや高く、一方、(2)(Sr,Ba)CO_3(ψ=2.0eV)と(3)(Ca,Sr,Ba)CO_3(ψ=1.0eV)とは仕事関数は小さいが高温(〜1000℃)において蒸発気化し易く寿命がやや短いことが判った。仕事関数の最も小さい(3)((Ca,Sr,Ba)CO_3を低温(700〜800℃)で用いる事とし、本研究経費により、底径5.0mm、高さ5.0mmの円錐状螺旋巻きタングステンフィラメント(0.2mmφ)の表面に電着法で固着させたエミッターを製作した。(業者委託) (2)現有設備お負イオン測定系への改造: 本研究経費により、負電圧直流安定化電源(高砂;TMD0360-022)、電離真空計(ANELVA;MIG721)、熱電対真空計(ANELVA;TG-550)を購入し、現有設備(ガスクロマトグラフ装置(島津;GC14-APF)を負イオン測定系へ改造した。 (3)新しい検出器の試作とガスクロマトグラフ装置への装着: 本研究経費により、島津のFID型検出器を改造(GLサイエンス(株)委託)した試作検出器に(1)で述べた(Ca,Sr,Ba)CO_3/Wエミッターを装着し、実際にクロマトグラムを測定した。試料はハロゲン化アルキル化合物を用いた。詳細な検討は次年度以降に持ち越した。
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