研究概要 |
本研究計画最終年度として、以下のような研究を実施した。 (1)最適操作条件の探索:高速有機分子の負イオン表面電離型検出器が、前年度に試作完成しその操作条件の検討を開始した。本年度も引き続き最適操作条件の探索を行った。試作検出器は、本研究経費による負電圧直流安定化電源(高砂、TMD0360-022)、電離真空計(ANELVA、MIG721)、熱電対真空計(ANELVA、TG-550)を備えた真空チャンバーに(Ca,Sr,Ba)CO_3/Wエミッターを負イオン化用固体表面として用いている。本研究経費で本年度新たに購入した定電圧/定電流直流電源(高砂、TM018-3)をエミッター加熱及び超音速ノズル加熱用電源としてに用いた。 検出特性に影響する各種パラメーターのうち最も重要な条件は、(i)固体表面の種類、(ii)ノズル温度、(iii)固体表面温度である。(i)は、最適表面として(Ca,Sr,Ba)CO_3/Wエミッターを昨年度選択した。(ii)ノズル温度について指数関数的に検出感度が増大し、(iii)固体表面温度も感度に対し同様な指数関数的影響を持つ。ところが、これらはバックグラウンド電流とノイズレベルにも重大な影響を持つ。感度とノイズの相反する挙動に対する最適な条件を求めた。 (2)ノイズ対策:上述の「感度増大とともにバックグラウンド及びノイズレベルが増大する」事の原因として(a)電流の安定度不足、(b)加熱表面からの電子放出、が考えられた。その対策として、(a)定電圧/定電流直流電源(高砂、TM018-3)を定電流モードで用い、(b)「マグネトロン」法を用いた。検出器の真空チャンバー内でイオンコレクター電極周囲にソレノイドコイルを巻いて約500ガウスの磁場を印加する事により、バックグラウンドの電子流と試料の負イオンとを分離して検出する。 (3)検出特性:上述の改善を行った検出器について、アルキルアルコール類、フェノール類、ニトロフェノール類を試料として検出特性を検討した。その結果、n-ペンタノールとフェノールに対する感度はそれぞれ8.5×10^<-1>及び2.6×10^0 Coulomb/gで、直線性が両者とも10^5以上であった。検出下限は1×10^<-13>まで改善された。FID法と比較すると新しい検出器はアルコール及びフェノールに対して約100倍の感度上昇がみられた。
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