1.ミジンコ類の分子生物学的取り扱いを効率よく行うため、以下の実験法を確立した。 (1)薬剤処理による変異誘起の最適条件の決定 (2)成体から純度の高いDNA及びRNAを調製する方法 (3)単為生殖卵をin vitro(マイクロタイタ-プレート上)で完全に発生させる方法 2.ミジンコ成体よりmRNAを抽出し、ラムダ-ファージベクターを用いてcDNAライブラリーを作製した。 3.ミジンコの環境応答機構を解析するために、飼育水の温度、塩濃度変化に応答して発現の誘導される遺伝子をディファレンシャルディスプレイ法により検索した。この結果3種類のcDNAを見いだし、その塩基配列を決定した。 4.ミジンコはヘモグロビンを大量に生産して低酸素濃度水域に適応する。この機構の解析のためヘモグロビン遺伝子のcDNAを単離して、その部分的塩基配列を決定した。 5.ミジンコは成育に適した環境条件下では単為生殖により個体数を急激に増加させるが、条件が悪化すると雄を産み出して両性生殖を行い、耐久卵を生ずる。このような生殖サイクルの転換の機構を解析するため、多数のホメオボックス遺伝子cDNAを単離して、その部分的塩基配列を決定した。 6.単離した上記の種々のcDNAを用いてin situハイブリダイゼーションにより、その組織特異的発現について解析を行いつつある。またBacillus brevisを宿主とする蛋白質の分泌生産系に導入して、遺伝子産物の生産を試みつつある。 7.ミジンコは水質の変化に特に敏感であることから、OECDにより環境指標生物に指定されているが、1(3)で確立した単為生殖卵のin vitro発生系を用いて薬剤の影響を個体レベルで定量的に解析する方法を開発した。
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