雄イモリ肛門腺腹腺より単離・同定された雌誘引ペプチド(ソデフリン)が生理的誘引物質であるという確証を得るためには雌誘引物質の生産部位、受容部位を特定することが必須である。そこで、ソデフリンに対する抗体を作成し、その抗体を用いて免疫組織学的にソデフリン存在部位を特定することを計画し、実行した。まず、単離・同定された雄イモリ肛門腺腹腺由来の雌誘引ペプチド(ソデフリン)を化学合成し、そのC末端にシステインを付け、ヘモシアニンをコンジュゲートしたものを抗原に用いてウサギでポリクローナル抗体をつくった。この抗体を用いて、免疫組織学的に肛門腺腹腺を染色したところ、上皮細胞の内腔に面した側に強い免疫陽性反応がみられた。さらに、金粒子でソデフリンを免疫標識し、電子顕微鏡を用いてソデフリンが細胞内のどの構造に局在するのかを調べたところ、主として腹腺上皮細胞の分泌顆粒中に局在することがわかった。従って、ソデフリンは腹腺から分泌されることがわかった。現在、雄飼育水中に存在する雌誘引物質が本研究で単離した活性物質と同一物質であるか否かを確認するために研究を進めている。また、ソデフリンに対する雌イモリの嗜好性は雌の鼻腔内に綿球を詰めたり、あるいは嗅神経を切断するなどの嗅覚阻害を行うと消失したことから、ソデフリン受容部位は嗅上皮にあると考えられる。現在、ソデフリン刺激に対する嗅上皮の電気的応答(嗅電図)を調べている。
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