研究概要 |
平成七年度に得られた結果によれば,二匹のオスアカゲザルの遭遇状況下で,優位である個体の視床下部一下垂体一副腎皮質系(HPA系)の反応が,劣位の反応と比べ有意に勝っていることが分かった.今年度は,HPA系と共にストレス反応に関係していると考えられている性腺系に注目し,HPA系との関連を調べた. 方法:1.すでに遭遇経験のある2匹のオスアカゲザルを,同一ケージに2時間にわたって入れ,一定時間ごとに採血を行い,アンドロジェンおよびACTHを測定した.アンドロジェンとACTHの分泌量は,遭遇前の血中濃度を基準線として,分泌曲線の面積(正あるいは負)で表した.また二匹の優劣は餌の取り合いおよび強制的な接触による戦いにより判定した,2.血中アンドロジェン値とCRH負荷時のACTH分泌量の季節変動を調べた. 結果:1.優位と判定された個体では劣位と比較してACTHの分泌量が勝った. 2.優位と判定された個体ではアンドロジェンの分泌量は0あるいは正,劣位個体では負であった. 3.血中アンドロジェンは,10月に最も低値となり,1月に高値となる季節変動を示し,CRH負荷時のACTH分泌は,10月に最も高値となり,8月に最も低値となる季節変動を示した. 結論:霊長類の順位関係と血中テストステロン値には関連があるとする説がある.本研究においては,遭遇状況というストレス下で,順位関係と,HPA系および性腺系の反応に関連のあることが認められた.結果の3.にあるように血中アンドロジェン値とACTHの間に直接の関係があるかどうかは不明であるが,少なくともHPA系と性腺系には間接的にしろ関連があり、ストレス反応およびストレスへの対処行動と関わっていることは考えられる.
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