研究概要 |
電子ビームを発生する鏡筒に薄膜窓を設け,そこからビームを空気中に取り出し,試料の観察や分析を行う簡易装置を提案した. この装置の設計のために必要な、真空、固体、空気中の電子の振る舞いを正確に計算出来るシミュレーションソフトを開発し、電子感光性薄膜による実験によって、その正確さを確認した。この一連の研究結果は電子情報通信学会英文論文誌に発表した。 そしてそのシミュレーションソフトによって分析装置の可能性について解析した.その結果,例えば厚さ1μmのBe窓を持つ鏡筒をつくり,窓から10μm離れた空気中に試料(例えば水)を置くとした場合,100keVに加速した電子ビームを用いれば, (1)試料面での電子ビームの広がりは約0.95μmに抑えられること (2)試料から入射電子数の6-15%の反射電子が得られること などが分かった.これらの結果より実用的な解像度と情報収集機能を持つ,簡易電子ビーム分析器の実現の可能性が高いことが分かった.この研究成果は電子情報通信学会論文誌に発表した。 今後の課題は,散乱の極少ないオリゴ散乱ビームの利用について検討を進めること(すでにシミュレーションによりオリゴ散乱ビームの存在は確認したので、これについても近々発表予定である)、2次電子の影響を計算に入れた散乱現象の解析プログラムを開発し、より高精度な解析を行うこと、磁界を利用した散乱抑制法について検討すること、これまで平行しておこなってきた実験結果を参考に装置を試作し、シミュレーションと実験値との比較、照合を行い、より実用化に接近することである。
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