研究概要 |
本年度は,従来の環境顕微鏡(ESEM)に採用されているOligo散乱電子ビームを空気中試料分析装置に利用する際の諸事項について考察した.理論的解析,ディジタルシミュレーションおよび実験によって,電子取り出し窓であるBeやC膜および空気中におけるOligo散乱現象について調べ、設計時に考慮すべき条件を求めた. まず,Be膜を介してOligo散乱電子ビームを空気中に取り出すための要件すなわち,加速電圧,膜厚,原子量等の関係を理論的に導出した. つぎに,Oligo散乱解析用のシミュレーションプログラムによって,Be膜やガス層におけるOligo散乱ビームの形成条件を求めた.すなわち,機器のモデルとして,加速エネルギー40keV,Be膜厚0.2μm,および空気層200μmあるいはヘリウム層1.5mmから成る構成を提案した.このモデルでは,試料表面に数nmのスポット径が得られ,画像化可能な量である約14%の電子反射率が期待できることが分かった. 最後に,SEMを利用して膜透過実験を行い,1次ビームが膜透過後観測試料(銅メッシュ)に照射され,反射した電子が再び膜を透過して画像を形成することを確認した.
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