研究概要 |
現在,電子ビームを応用した分析装置としては,走査型電子顕微鏡や透過電子顕微鏡などがよく知られ,広範な分野で利用されている.しかし,これらでは試料を真空中に置かなければならず,生物検体などでは水分が瞬間的に蒸発し,自然の状態での観察ができなくなる. そこで筆者らは,試料を空気中に置く形の電子ビーム分析装置の可能性について検討してきた.目指している装置は光学顕微鏡の簡便さとESCAなどが持つ元素分析機能を兼備した簡易分析装置である.筆者らは,ビームをBeやC窓膜を介して空気中に取り出すことを考え,その場合に必要な諸条件や可能な精度等について検討した. 膜を介して得られた電子ビームでは,各種原子との衝突・散乱のため,スポットサイズが大きくなり,高分解能を望むことはできない.しかし,散乱の少ないOligo散乱ビームを利用すれば,高い分解能が得られる. 本研究では,まず,高エネルギー電子散乱現象の解析にも対応出来るように,相対論的効果を考慮に入れた単一散乱モデルモンテカルロ法からなるシミュレーションプログラムを開発した.そして,高分解能分析装置の設計に必要な膜厚,気圧,入射エネルギーおよび構成寸法などの関係を具体的に求め,最後に,実験によってその正当性を確認した.
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