研究概要 |
平成9年度の研究計画に従って,各研究者はそれぞれの役割分担に応じて積極的に研究を行った.各研究者は,日本応用数理学会1997年度年会,数値解析シンポジウム(東京大学)等で研究成果の発表を行った.また,関係の学術雑誌に投稿し,その内この一年間に掲載された論文は3編である.新たに得られた主な知見を以下に挙げる. 1.多次元積分の優良格子点法におけるZinterhofの公式の評価. Zinterhofの公式は,最良ではないが構成法が簡単で,最良公式を求めることが計算量の点で不可能な高次元積分公式として提案された.実験により,適切な標本点数を設定すればKorobov型公式に匹敵する性能を持つことが分かった.この公式により,超高次元自動積分法を構成する可能性を見いだした. 2.多項式剰余列の安定な拡張算法の開発. Givens回転により,拡張剰余列を極めて安定に生成する算法を開発した. 3.多変数多項式剰余環の基底を求める数値的算法の開発と,多変数代数方程式の解法への応用. Givens回転法を多変数多項式環へ拡張して,多変数多項式剰余環の基底を求める安定な算法を開発した.それを,多変数代数方程式の固有値問題への変換して解く方法に応用した. 4.多変数多項式イデアルのGrobner基底を求める数値的算法の開発. Givens回転法により,多変数多項式イデアルの剰余環基底を求めると同時に,そのイデアル自身のGrobner基底が求まることが分かった. 5.ベクトル計算機に適した大規模線形方程式解法の開発. 流体計算に現れる行列の構造的な特徴とベクトル計算機の性能特徴から,ブロック5重対角行列群に対して,計算時間が3割短縮できる新しい解法を開発した.周期境界要素を持つブロック5重対角行列群に対しても,特殊な前処理を施すことにより,同様にベクトル計算機に適した解法を構成できる.
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