研究概要 |
我々は、数値解析における多次元問題に対する高速算法と,その高速計算機への効率的な実装法に関する研究を進めた.代数方程式・多項式演算の分野では,数値的因数分解の新しい算法,多項式剰余列の安定な算法を発見した.また,多変数多項式環のGrobner基底,剰余環基底について研究を進め,安定な数値的算法を考案した.多変数常微分方程式の分野では,効率的な並列計算法をめざし,Two-Step Runge-Kutta Methodsの開発と実装を行った.また,多変数常微分方程式の高速アルゴリズムの応用として,特性曲線法を用いた移流拡散方程式の解法を研究した.確率微分方程式の分野では,ROW型公式の次数条件がグラフ理論的に確定できることを示し,数値スキーム設計理論の基礎を築いた。また,数値スキームの安定性基準についていくつかの提案を行った.差分微分方程式の分野では,連立線形系の安定性に関して新しい知見を得,安定性判別の実際的な手法を提案した.ソリトン方程式の分野では,2次元ソリトン方程式であるKP方程式の有効な近似解法を構成した.数値積分の分野では,多次元積分のための高精度Good Lattice Points公式の構成を行った.また,新しい公式として疎格子標本点公式の開発を行った.大規模線形方程式の分野では,積型反復公式(GPBi-CG法)を提案し,反復公式の設計に新しい段階を拓いた.また,高速計算機のアーキテクチャに適したアルゴリズムの開発も並行して行われた.数理モデルの視覚表現の分野では,その基礎として,制約付きスプライン曲線生成式の研究を行った.以上の研究成果として,関連研究を会わせると33編の論文が学術雑誌に掲載された.
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