研究概要 |
三次元放射状多重き裂の一例として,アルミ薄膜配線における多重微小欠陥形成とそれに伴う抵抗変化を取り上げ詳細に検討した。高密度電子流による金属原子の移動現象,すなわちエレクトロマイグレーションによる多重微小欠陥の成長は最終的に配線の断線故障を引き起こすため,この非破壊評価は半導体集積回路の信頼性向上の鍵となっている。 まず,多重微小欠陥をもたらすエレクトロマイグレーションによる電子流束の発散について新しく定式化した。ここでは,複雑形状の配線に生じる二次元の電流密度および温度分布の他,配線内の結晶粒界構造のモデル化により配線構造も考慮に入れた。これにより,初めて多重微小欠陥形成の影響因子を全て統合的に同式中に包含した。次に,定式化された原子流束発散に基づいて予測した多重微小欠陥形成と,微細アルミ薄膜配線を用いた実験における観察結果を比較したところ,両者は線形性をもって一対一対応をみせたことから,本定式化による原子流束発散は多重微小欠陥を特徴化する支配パラメータであることを示した。さらに,同支配パラメータを用いてある条件下での多重微小欠陥の成長過程を数値的にシミュレートすることで,同微小欠陥の成長と配線全体の電気抵抗変化の関係を捉えた。この関係を較正に用いることにより,配線抵抗増加の測定による薄膜配線における多重微小欠陥の非破壊評価を可能にした。 最後に,本研究で開発した多重き裂非破壊評価のための種々の方法の特徴について,統括的に,4th Far East Conference on NDT(韓国)において「NDE of Multiple Cracks by Electromagnetic Techniques」なる題目で招待講演として発表したことを記しておく。
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