研究概要 |
本研究は、完全流体潤滑状態から混合潤滑状態にわたる油膜の形成と接触の機構を,フラクタル幾何学を用いた粗さの記述に基づいて統一的に解釈するための,理論的な足がかりを築くことを目的とし,実験と理論解析とから成る.本年度は,規則的粗さの混合潤滑試験,不規則的粗さに対して蛍光顕微鏡を用いた摺動面間の油膜とマイクロキャビテーションの測定,フラクタル表面の流体潤滑のモデルに基づいた理論解析を行った. 1.フォトエッチングにより銅表面に作成した規則的粗さの混合潤滑実験を行い,流れに対する微細凹凸の角度を変えたとき,摩擦係数や部分接触開始時の膜厚比は中間の角度において極大値をとることを明らかにした. 2.ショットブラストにより鋼球表面上に不規則的粗さを形成し,鋼球とガラスディスクによる点接触混合潤滑実験を行った.油膜の蛍光顕微鏡による観察において,蛍光像と反射像の画像解析により,なじみに伴って2面の相対的な接近量が減少し局所的な接触面積が増加することを定量的に捉えることができた. 3.鋼球とガラスディスクを用いた実験を,純すべり,及び純転がりの条件の下で行い,マクロな流体圧力が低い条件下でマイクロキャビティーが発生すること,及び接触した突起のなじみによる変形に伴ってマイクロキャビティーが成長することを見出した. 4.フラクタル表面の流体潤滑の摂動法による理論を2次元問題に拡張するとともに,フーリエフィルタ法により生成したフラクタル表面の疑似データを用いた直接数値解析を行った.直接数値解析では,格子点数512×512まで計算を可能とし,摂動法による近似解の有効性を確認した.平均流モデルの流量係数は,表面のフラクタル構造を考慮に入れた場合,白色ノイズ的表面に対する解とは異なることを示した.
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