金属と非金属または二種類以上の金属を直接反応させることにより、高融点無機化合物や金属間化合物を迅速かつ経済的に合成する燃焼材料合成法は、元素混合粉末圧粉体中を燃焼波が自己伝播することにより、燃焼生成物として高融点無機化合物が合成される点に特徴がある。本研究では、元素混合粉末圧粉体中を自己伝播する燃焼波(火炎)に着目し、成分組成が燃焼波伝播方向と垂直方向に傾斜分布をもっている場合に、この傾斜組成分布が燃焼波伝播に及ぼす影響を、元素粉末の粒径、最終生成物による希釈の程度、初期温度などとともに、組成分布の勾配を種々に変化させて、実験的に、火炎伸長による消炎の影響を調べることを目的としている。まず、傾斜組成分布のない矩形試料(縦20mmx横50mmx厚さ3〜10mm)をチタニウムと炭素の混合粉末を用いて作成し、自己伝播火炎が定常に伝播する可燃範囲の測定を行うとともに、以前に得られた円柱状試料の測定結果との比較により、粒径および試料断面の代表寸法により定義されるパラメタを用いれば、試料断面形状によらず、統一的に可燃範囲を整理できることを見い出した。さらに、燃焼波の伝播速度(燃焼速度)についても、このパラメタによる整理が有用であることを確認した。次に、傾斜組成分布の影響を調べる第一段階として、混合比が異なる二層状試料の作成し、燃焼波伝播にどのような影響が及ぶかを観察した。その結果、二層の界面において燃焼波の曲率が著しく変化するものの、ともに可燃範囲内にある二層状試料においては、燃焼波が連続していることが確認された。また、どちらかの層が可燃限界に近い場合には、燃焼波はそれぞれ独立に伝播し、二層の界面において割れが生じることも確認された。今後、温度分布の測定に重点を置きつつ、燃焼波が火炎伸長により消炎する可能性について、希釈度や粒径等を変化させて実験的に調べていく予定である。
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