生命そのものが認識を獲得していくプロセスに他ならない。また、近年、プログラム可能型大規模論理素子(Field Programmable Gate Array)の発展に伴い、機械に進化機構を組み込んだといわゆる、ハードウエア進化を実現できる時代になった。本研究では、人工的生物集団の進化機構に遺伝的アルゴリズムを組み込み、環境に適応する過程で、人工的生物がどのようにその環境に適応するための認識機構を獲得していくのか、また、その認識機構そのものはどのようなアルゴリズム(情報貯蔵・処理機構)になっているかを考究することをその目的とした。 この研究を遂行するにあたり、まず、多細胞生物であるダニを人工的生物のモデルとし、その進化シミュレーションを設計・制作した。プログラミング言語はオブジェクト指向型言語C++を用い、この進化過程のハードウェアー実現が可能な形で、クラスの設計・制作を行なった。本研究で得た知見は以下の通りである。 1.進化の過程で環境構造の規則性が人工的生物のGenotypeに忠実にコード化されることがわかった。 2.進化過程で獲得した認識機構は、「AならばB」という継起回路の連鎖機構という形でアルゴリズム化がされること、すなわち、行動プログラムの論理が包括的(サブサンプション・アーキテクチャー)であることが明らかになった。 このことにより、進化過程で獲得される人工的生物の知能発生メカニズムはR.Brooksのいうような行動型AI原理に基づいて形成されるという仮説が検証された。
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