1.収集した声帯疾患者の声帯及びその音響分析データ、病変声帯のビデオ画像データ、専門医師による診察情報や病理学的検査データ等を基礎に、特に症例の多い声帯結節、声帯ポリ-プについてその振動状態を模擬できる声帯振動モデルの研究・開発及び改良を行った。 2.1.で開発された声帯振動モデルを用いて嗄声を合成し、その音響的特徴量とそれを生ずる各種の病変声帯モデルの物理的条件との関係について詳細な分析と解明を行った。 3.1.、2.の結果を基に、声帯病変の類別及び病変程度の推定に有用な音響的評価量に関する研究を行った。更に、病変程度(例えば、声帯結節や声帯ポリ-プの大きさ(腫脹程度)及び硬さ)の推定実験を行い、推定方法、推定に用いた嗄声の音響的特徴量及び音響的評価量の有効性について検討を行った。 以上の研究の結果、以下の知見を得ることができた。 [1]開発した声帯結節モデル及び声帯ポリ-プモデルでは、(1)声帯モデルを実際の声帯の構造に整合させたbody-coverモデルにしたこと、(2)従来のモデルでは考慮されていなかった声門閉鎖不全による気息性雑音を考慮したこと、等により病変を有する声帯の振動状態を適切に模擬でき、また声帯病変患者音声の特徴を有する嗄声を合成できることが確認された。 [2]実験により、声帯の病変程度(声帯結節や声帯ポリ-プの大きさ)の推定が高精度で行われること、提案した推定法が有効であることなどが確認された。 [3]推定に用いた音響的特徴量(波形に関する情報及び推定雑音スペクトル)は嗄声の特徴を表現するのに有効であることが確認された。
|