研究概要 |
低軌道衛星通信システム(LEOシステム)ではシンボルレート程度以上の大きな周波数偏差を伴い、従来用いられているの手法では,スペクトル拡散(SS)信号の拡散符号同期や搬送波周波数同期は,ほとんど不可能といってよい.本研究では,この問題解決のために,3つの方法,(1)分割MFによる方法,(2)時間周波数変換による方法,(3)M値SS信号の適用による方法を考え,これらを比較検討することにより,大きな周波数偏差を伴うSS信号の同期を高速に確立するための手法についての指針を得ることを目的として研究を行ってきた.その結果、以下のような事が新たな知見として得られた. (1)分割MFによる高速同期捕捉手法として、チップ時間毎に同期判定をリアルタイムに行うシリアル・サーチ法と、分割MF出力をある程度にわたり蓄積し、そのなかから最適のタイミングを得るパラレル・サーチ法を比較した.平均同期捕捉時間の観点からみると、パラレル・サーチ法が常に良い特性が得られたが、複雑な受信構成を必要とすることがわかった. (2)時間周波数変換による方法として、受信信号を離散フーリエ変換を行った後、拡散符号をフーリエ変換したものを畳み込む事で周波数領域で逆拡散を行う手法を提案し、その有効性を明らかにした.その結果、大きな搬送波周波数偏差が存在する場合でも、拡散信号の同期、周波数偏差推定が可能である事がわかった. (3)M値SS信号において、信号が搬送波周波数偏差を受けた場合、信号間の直交が崩れる.しかし、直交符号としてアダマ-ル符号を用いた場合、その受信出力の様子がアダマ-ル符号の性質に伴う特徴が現れることがわかった.この特徴を利用し、搬送波周波数偏差に強いM値SS通信方式を提案し、その特性を明らかにした.その結果、シンボルレートの1/2程度までの搬送波周波数偏差に対応できる方式であることがわかった. 以上の研究成果の幾つかは、国内外の学会・論文等に公表を行った.これらは、独創的な研究として高い評価を受けている.
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