研究概要 |
1.R-L-Diode回路はその単純さにもかかわらず、豊かな分岐現象(周期倍分岐、saddle-node分岐、intermittency,crisis,chaos等)が観測される。我々の様な工学の分野だけでなく物理学の研究者達もこの回路を研究している理由の一つはこの系には人工的(artificial)な部分が全くない自然な系だからと思われる。 Pecora-Carrolカオス同期と関連してchaotic maskingというパラダイムが提案されている[Cusmo and Oppenheim,Phys.Rev.Lett.1993]。これはカオス的ふるまいを示す系の状態変数で、情報信号(たとえば音声)をおおってしまい(masking)それを通信系を通して送り、受信側で適当な同期系を構成してもとの情報信号を復元しようとするものである。本研究で検討しているR-L-Diode回路で情報信号を音楽として実験を行い、復号可能性を昨年度確認したが、それに附随して新しいopen problemが二つ発生した: (i)“復号"された信号はもとの情報信号(音楽)の振巾の約70倍となり、カオス同期系に増巾メカニズムが組み込まれている事がわかった。が、何故増巾が起こるかは未解決である。 (ii)masking schemeが何故働くかも未解決である。 2.第一年度に得たカオス同期の理論的正当性は、R-L-Diode回路に特化したものであったが、より広いクラスの一般的非線形ダイナミカルシステムへも適用可能である事を示した。
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