今年度得られた成果及び新しい知見をまとめれば以下のようになる。 (1)本研究は、厳密解が得られる総当たり法を基本としているために複数の車輌と複数の乗客のすべての組合せを数え上げる必要がある。これを高速に実現するための2種類のオペレータを導入し、if文を一切使用しないアルゴリズムを揮発した。 (2)ネットワーク規模が大きくなると車輌と乗客の組合せ数が増大する。これらの組合せのすべてをメモリ容量が制限されたパソコンで保存することは不可能である。このため逐次添加アルゴリズムを導入し、都市を分割することによって計算過程において必要となるメモリ容量を削減し、中規模のネットワークを扱えるようにアルゴリズムを改良した。 (3)使用する車輌の台数の変化に対して、全車輌の走行距離の和とその内の最大走行距離の関係は、互いにトレードオフの関係にあることが明らかになった。 (4)当初、使用する車輌の台数は、ある任意の台数に固定した形の問題設定としていた。しかし、前項(3)で明らかになったトレードオフの関係から評価関数を構築し、区間縮少法的な考え方を導入することにより最適な車輌台数の探索が能率的に行える可能性のあることが明らかになった。 現在、パーソナルコンピュータを使用して中規模のネットワークを扱えるようになった。さらに処理時間の短縮のためにトランスピュータによる並列計算に適したプログラムの開発を行っている。また、前項(3)の検討を行うために様々な乗客の配置データを用いて実験を行った。その際、一般に使用する車輌の台数と全車輌の走行距離の和は比例関係にあるが、ある程度都市数が多くなると使用台数が多くても逆に走行距離の総和が少なくなる事例があることが分かった。この現象を理論的に検討する場合、使用する車輌の台数が異なった場合の走行距離の大小関係のみを比較すれば良い。このため距離の測度をユークリッド距離でなく、マンハッタン距離を用いて現在検討を行っている。
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