今年度では、昨年度開発した精密ビーム位置走査型ガスΔE-SSDEエネルギー検出器の性能試験を引き続き行うとともに、加速器センターの24MeV陽子ビームをもちいて断層撮影の可能性を探る実験を鋭意行った。その結果、エネルギー検出器は必要な性能を有している事が確認でき、かつ残留エネルギー法により断層像を不鮮明ながら得られる事を直径3mmの小ファントムをもちいたテスト実験結果より示すことが出来た。しかしながらテストデータの鮮明度が低く解像度に改良を要することが判明した。その原因追求に数ヶ月の日時を要したが、最終的には従来のイオン源に代えてより微少ビーム生成が可能な走査型重イオン源が必要であるとの結論に達した。そこで、従来のイオン源を走査型イオン源に改造する作業を進め、12月までに作業を終了した。現在ファントムを用いた実験を再開し、データを蓄積しているところである。 残留エネルギー法による陽子線CTが可能であることを実験的に示すことが出来たが、解像度の向上および所要撮影時間の短縮を図ることも重要である事がわかった。これが本研究で得られた結論である。 今後、改造したイオン源をもちいて解像度の改良を計るとともに、高エネルギー研の80MeV陽子ビームによる本格的な断層撮影の実験を遂行する予定である。
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