布の手触り感の計測及び微風速計測用センサの開発の2つの研究を併行的に実施した。 1.布の手触り感覚の計測 布の手触り感覚の計測についてまず感圧ゴムを用いた接触子センサを開発した。感圧ゴムの出力信号の特徴分析により、綿、麻、ウ-ル、シルクの4種類の布を大まかに種類判別できた。この場合、感圧ゴムの出力信号をイメージ図に変換し、手触り感の認識・比較が容易に行えるようにした。一方、布の表面凹凸情報等を採取するには感圧ゴムの接触面積が制御しにくくまた磨耗しやすいことから、新たに光ファイバを用いた猫のひげ型触針センサを製作した。ファイバの先端を斜めに切断し、切断面に金蒸着することにより、ファイバに入射される変調レーザ光を先端から漏出させる。布をなぞることに伴うファイバ先端のステイックスリップ振動を光変位センサで捕らえ、布の手触り感覚に対応する触針変位情報が測定される。布の種類によって触針の振動は異なり、また同じ布でもファイバの長さとたわみの大きさによって振動挙動が微妙に変わることが分かった。今後は長さが異なる複数本のファイバ触針をもつ計測システムの構築を目指すと共に、センサ出力と布の手触り感の関係をさらに調べ線織面内挿法による計測系の確立を図る。 2.微風速測定及び熱減衰測定用センサの開発 微風速測定及び熱減衰測定のために小型薄膜測温抵抗センサの利用方法について調べた。その結果、ヒ-タから十分近い距離にある測温センサでさえ、ヒ-タの加熱周波数が100Hz以上になると、熱拡散のため出力は急激に減衰することが分かった。また、風速の変化に伴い、出力の直流レベルは大きく変化するが、周波数ゲイン特性はあまり変わらないことが確認された。それに対して、2つの隣接するセンサの差分を取ると、直流変動分が少なくなり、かつ一定位相遅れを与える周波数は大幅に小さくなる。また差分係数を調整することにより一定位相遅れとなる発振周波数が精度よく決まることが期待できる。差分センサのピッチとヒ-タまでの距離を変えて、差分出力の特性を調べ、結果を熱伝播モデルによるシミュレーション結果と比べると、傾向は一致するが、期待していた現象が顕著に現れていないことが分かった。今後は差分センサの構造を検討すると共に、差分係数の最適調整値の効果を再検討する。
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