研究概要 |
本年度はまずα波の基本特性に関する確認実験を行った。すなわち,明確に快適と不快を分離し得る五感に対する刺激を準備し,それらに対する脳波反応を調べたものである。視覚については,アルプスを背景とした野草の花が咲き乱れる高原の写真(快刺激)と無惨絵(不快刺激)を用いて実験を行ったが,α波の強度(α波の周波帯域でのスペクトル積分値)でみたとき,前者に対するものが明らかに大きく,又1/fゆらぎについても前者の場合の傾きが-1に近い値を示した。同様に聴覚についてはクラシック音楽(快)とハウリング音(不快)を,味覚についてはス-プ(快)と漢方薬(不快)を,嗅覚については化粧品(快)とアンモニヤ水(不快)を,触覚についてはム-トンマット(快)と氷水(不快)をそれぞれ準備して比較実験を行ったが,ほぼ視覚の場合と同じ結果を得た。次に対象道路(国道18号線と19号線)から100m〜500mの合計123の区間を抽出し,それらの区間について物理的環境条件の調査を行った。道路構造条件は曲率半径や縦断勾配等であり,平面線形図及び縦断線形図をもとにデータを整理した。道路工作物・付属物の要因としてはガードレール,ふたの無い側溝,歩道の有無,警戒標識を取り上げ走行中の車から撮影したビデオや写真によって計測した。沿道条件は建造物の存在量,樹木植生の存在量,平地,谷,コンクリート壁又は岩肌,山の有無であるが,主に写真によって計測した。前方区間との関係としては道路の視認可能距離と全道路幅員の距離微分値の2要因を考えたが,前者については写真とビデオにより,後者については平面線形図を利用してそれぞれ計測した。道路景観としては,各区間入口点付近から撮影した写真を利用し,近景域,中景域,遠景域に分けて人工構造物,平地,山・樹木,空の視界全領域内面積を計測し,それを説明要因とした。脳波計測については,十数名の被験者に被験者所有の車で対象道路を走ってもらい,その間の脳波をデータレコーダに収納するという方法を採った。道路走行条件を一定に保つために,実験日は週日で雨天を避けるとともに計測時間帯を午後1時〜4時の範囲に限るようにした。
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