研究概要 |
道路単路部は交差部と異なり勾配,幅員をはじめとする種々の道路条件,沿道環境,交通条件によりその走行性が変化する。したがって,設計や改造のやり方如何より走行性をコントロールできる道路部分である。こうした視点に立ち,本研究では単路部を対象として,運転者の脳波スペクトルを介した走行快適性指標をまず見い出し,それがいかなる道路環境によって支配されるかを分析した。 対象道路(国道18号線と19号線)から100mから150mの合計123の区間を抽出し,それらの区間について物理的環境条件の調査と十数名の被験者の脳波計測を行った。脳波データはスペクトル分解し,α波(8〜13Hz)領域での積分値(以下パワー値という),α_1波(8〜10Hz)およびα_2波(10〜13Hz)のパワー値を求めた。 また別途ロ-パスフィルタを使ってα波の1/fゆらぎ量も求めた。これら4つの快適性指標を被説明変数とし,道路環境条件に係わる諸物理量(総計41〜45変数)を説明変数とする重相関分析を行った結果,次のようなことが判明した。 (1)左カーブ区間 ・カーブがきつくなるほど不快。 ・左側沿道の建造物とコンクリート壁・岩肌が存在すると快適性が減る。 ・全道路幅員が大であると快適。 ・右側沿道の谷は不快要因となるが,コンクリート壁・岩肌の存在は快適性に繋る。 ・右側近景域の人工構造物と山・樹木の存在も快適性に結びつく。 (2)右カーブ区間 ・走行車線幅員が大である程快適性が高い。 ・左側沿道の谷あるいは左側近景域の平地は不安感を与える。 ・右側近景域の人工構造物の存在は快適性を減ずる。 (3)直線区間 右カーブの場合と同様に,走行車線幅員が広いことは快適性向上の方向に作用する。 ・歩道の存在も快適性を増やす要因となる。 ・警戒標識が多いと気が散るせいか快適性が損なわれる。 ・右側沿道のコンクリート壁・岩肌の存在は何か安心感のようなものを運転者に与えるのか快適性を生む要因となる。
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