研究概要 |
平成7年度は主としてサービス水準指標の選定とセクタレベルのサービス水準算定モデルの開発を行った. 前者に関しては,管制作業記録(レーダスクリーン映像と交信音声を収録したビデオテープ)の解析を行い,各セクタを担当する管制官の作業負荷の増大が,主としてハンドオフ移送継承待ちの増加に反映されることがわかった.これは,管制官が自己の管制下にある航空機のコントロールを優先的に処理し,その処理に忙殺されている間は移送継承要求に応じられないという傾向を有するためである.この結果と他の定性的な検討結果等から,交通容量を算定するためのサービス水準指標としてハンドオフ移送継承待ち時間がふさわしいと結論づけた. 後者については,Round RobinタイプとNested Queueタイプの2種類のモデルを構築したが,移送継承待ち時間の分離の容易さと設定可能な管制処理時間分布の自由度の大きさ等の観点から,Nested Queueタイプの待ち行列モデルをセクタレベルのサービス水準算定モデルとして採用することとした.いくつかの条件を設定して試算を行ったところ,管制作業負荷とハンドオフ移送継承待ち時間の相関性が十分高いという結果が得られ,管制作業負荷が移送継承待ち時間の適切な代理指標となりうることが明らかになった.この結果は,空域の混雑が顕著になるに連れて移送継承地点が内部に移動し,実質的な管制セクタの大きさが縮小してしまうという現象をよく説明しており,管制間の実感ともよく一致する結果であるとの評価が得られている. 得られた結果の一部を紀要にとりまとめてこの分野における各国の研究者に送付し改善意見を得たほか,土木学会と第7回世界交通学会で発表し聴衆の大きな関心を引いた.
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