水道は若年労働力の不足、複雑深刻化する水源汚染に対応するため、小規模水道を中心に無人で管理できる確実な浄水システムの確立を模索している。そのため、膜ろ過が今後の浄水処理で特に小規模施設において、除濁処理の中心となることと期待されているが、この方法では溶解性成分に近い粒径を持つ物質の除去は容易でない。これらの物質の中にはトリハロメタンの前駆物質である腐植物質が含まれ、有効な対応策の検討が課題となっている。 本研究は水道原水中の懸濁液の表面が負に帯電していることから、膜を負に帯電させることで膜の目詰まりを防ぎ、高フラックスで除濁を行うことを目的としている。また、無機質の除濁のみならず、トリハロメタンの前駆物質である腐植物質も負に帯電しているので、通電膜での除去が期待できると考えられる。 本年度は通電膜によるフミン質の除去、ファウリングの抑制に重点を置き、デットエンドろ過で、主に印可電圧の影響について検討した。 実験は3種類のフミン質を用い、無機懸濁液質としてカオリンを共存させる条件で行った。その結果、印可電圧が高くなればフミン質の除去率が高くなること、また、より高分子のフミン質ほど除去率が高くなることが判明した。さらに、膜のファウリングについても、ろ過継続に従いフラックスは低下するものの、印可電圧が高いほどその低下割合が緩慢なことが分かった。しかし、予め凝集処理をした場合には印可電圧に関係なくフラックスの低下が見られることから、電位による反発力が有効に働いていると考えられ、通電膜の利用は明らかにファウリング防止に有効なことが判明した。
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