下水処理場から採取した混合生汚泥を使用し、重金属を溶出させるための酸生成実験を10l完全混合型リアクターを用いて実施した。本年度は、リアクターの水理学的滞留時間と温度はそれぞれ20日、35℃に固定し、硫酸塩還元とメタン生成を抑制する目的で、二つのリアクターのうち一つはpH(4あるいは5、塩酸を使用)、もう一つはORP(-100あるいは-300mV、ばっ気による)を制御して運転する方法を採用した。また、効果を比較するために、強酸による化学的薬品処理(硫酸を使用)も実験に付け加えた。 まず、薬品処理の結果、主要な重金属のうち大半はpHが約2あるいはそれ以下にならないと溶出率が50%以上に達せず、効果は大きいが低pHに関わる設備やコストの面に問題が残されていると思われた。酸生成実験の場合、CdとNiについては、pHを4〜5に低下させることによって50%前後の溶出率が得られた。Cu、Pb、ZnおよびAsについてはORP制御により、pHが8前後と高かったにもかかわらず15〜40%程度とそこそこの溶出率が得られた。Crについては溶出率が10%程度未満とほとんど溶出されなかった。ORP制御は上記のように空気を吹き込むことにより行ったが、好気性消化が進行して30〜40%の有機物が分解されてしまい、後段のメタン発酵に回される有機物が減少することが観察された。以上のような知見より、平成8年度は空気吹き込み量を絞りながらpHとORPを同時に制御する方法を試してみるつもりである。
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