汚泥の酸生成に伴う重金属の溶出について、本年度は下水処理場から採取した初沈汚泥と終沈汚泥を用いて無制御、pH4制御、ORP-150mV制御、およびpH4とORP0mV(初沈)またはORP+100mV(終沈)同時制御の4条件で回分実験により検討した。初沈、終沈汚泥を別々に用いたのはそれぞれ性質が異なるからであり、また、回分式で実施した理由は条件を数多くとれるからである。その結果、 (1)pH制御のCdとZn、ORP制御のAsに約50%あるいはそれ以上の除去効果があった。 (2)HgとCuに対してはほとんど効果が見られなかった。 (3)CrとNiのpH制御においては、実験上の問題として塩酸の添加に伴うこれら重金属の汚染が確認された。 (4)初沈汚泥と終沈汚泥については性質、重金属含有量が異なるが、除去率で見るとほぼ同様な結果を示した。 (5)酸生成の分解物は、錯体形成によって重金属を化学平衡から計算される溶解性濃度より数桁も高く保つと考えられた。これは特に終沈汚泥(すなわち、余剰活性汚泥)について明確に現れ、遠心分離液中の重金属濃度と有機酸を除く有機物濃度の間に高い相関が見られた。 今後は、重金属に関する水質化学や有機酸生成、汚泥分解を促進させる条件等をより詳細に検討し、それと伴にさらに効率的な除去方法を模索していくことが課題である。
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