当初の研究実施計画に基づき、平成7年度は、まず日本国内に蓄積された研究資料の把握に努めた。そのための東京への資料調査旅行を1回行い、日本建築学会図書館(東京都港区)に所蔵されている文献資料の内容を調査した。次いで、北欧本国における既存研究や図面などの原資料の内容も、手紙による問い合わせ等で可能な限り把握するようめざした。おもにフィンランド建築博物館(ヘルシンキ)と連絡をとり、いくつかの有用な助言および情報の提供を得た。これらの収集資料に関しては、平成8年度中にデータ・ベースを作成できるように、パーソナル・コンピュータを利用して整理中である。 整理のついた資料を用いての分析および研究の作業も当初の計画どおり開始し、ナショナル・ロマンティシズム建築を2つの側面から捉えることをめざしている。1つの側面は、当時の建築家による重要な公共建築の研究で、この面からは建築家エリエル・サ-リネンの活動と作品分析に終点を当ててゆく。『日本建築学会計画系論文集』において詳細な研究を連続して数編発表する予定でおり、すでに平成7年度中(平成8年2月)に<その1>が掲載された。もう一方の側面は、無名の建築者たちによる大量の都市住居群の建設を中心とした住環境形成の研究で、この面からはフィンランドの首都ヘルシンキの動きに焦点を当てる。こちらも連続研究をめざしており、平成8年度5月に<その1>が同論文集に掲載されることがすでに決定している。2つの側面とも、平成8年度に<その2>移行を執筆してゆく予定でいる。
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