|
交付申請書に記した研究実施計画に基づき、研究最終年度の今年度はナシナル・ロマンティシズム建築に関連する分野にある程度広く目を向け、全体の中でナショナル・ロマンティシズム建築を正しく位置づけ、今後の研究に資するための基礎固めを行った。
これまでに収集してきた資料は、当面可能な範囲での利用をしやすくするためにも、次の2つの整理を行った。第1に、フィンランド国立建築博物館(マルヤ・リ-タ・ノッリ館長)および国内関連機関の協力によって収集してきたナショナル・ロマンティシズムとその関連分野に関わる研究文献に関しては、そのうち主要なもの約250について、分類をした上で、個々に解題を行ってリストを作成した。第2に、ヘルシンキ市都市計画局(パ-ヴォ・ペルッキオ局長)の協力によって得た図面に関する情報については、現存図面の系統化を行い、そのうち約80を用いてヘルシンキの都市形成過程(1550〜1950年)の把握に努め、その大きな流れを記述した報告書を作成した。
今後の研究の方向性としては、上記の作業であきらかにしたナショナル・ロマンティシズム期の都市と建築の全体の中での位置づけを基盤に据えて、個々の個別テーマに関する研究を論文の形で発表してゆきたい。具体的に研究の2本の柱とするものは、建築家エリエル・サ-リネンの活動とその公共建築を中心とする作品の分析、および都市ヘルシンキにおけるユーゲント期の都市型住居群の建築を中心とした住環境形成の分析である。
|
