本研究では、これまで生物試料に一般に用いられ無機材料への応用が限られていたミクロトーム法を導入し、先端材料の連続超薄切片を作製し、各切片から得られる2次元の原子構造の情報をスーパーコンピュータによって合成し、3次元の構造解析法を確立することを目的としている。 まず、形態制御された酸化鉄粒子に対して、ミクロトームによる切削のための最適条件を見いだし、数十nmの厚さの連続した超薄切片を得ることに成功した。また、超高圧電子顕微鏡を用い、0.1nmの高い分解能で、連続切片の高分解能電子顕微鏡像をイメージングプレートを用いて撮影した。これらの実験を通して、ディジタルデータに基づく定量的な画像データが得られている。現在、学内高速ネットワークシステムを通して、スーパーコンピュータ上に高分解能電子顕微鏡像から3次元構造を組み立てるための立体構築用プログラムを作成している。また、すでに連続切片が得られている、酸化鉄粒子以外のセラミックス粒子や多層膜についても、ミクロトーム法による切片の作製、及び超高圧電子顕微鏡による高分解能像の観察を実施している。 なお、酸化鉄粒子のミクロトームによる切削より、切削条件が適切でない場合には、連続切片が得られず、また、多くの切片に歪が導入されることが明らかになっている。最適な切削条件でえられた酸化鉄の多結晶粒子については、ほぼ均一な厚さの連続切片が得られ、これらの切片の電子顕微鏡観察より、多結晶体を構成する微細な結晶子の形や配列洋式が明らかになっている。他のセラミックス粒子についても、ミクロトーム法の応用を試みているが、例えばシリカ粒子では、酸化鉄と同様の切削条件でも、より多くの歪が切片に導入されることが明らかとなっている。
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