研究概要 |
軽量で耐高温酸化性にも優れるAl_3Ti基化合物の重大な欠点である室温での低延性を,結晶構造および金属組織の制御により,改善する試みを行った。まず,従来のようにAl_3TiのAlをCrやMnなどの比較的重い金属元素で置き換えるのではなく,Tiの一部をScで置き換えたAl_3(Ti_<1-y>,X_y)合金をアルゴンアーク溶解により調製した(ただしX=Sc,Er,Lu;y=0.25〜0.75)。そしてX線回折によりy=0.25でいずれの添加元素XについてもLl_2+D0_<22>の2相となることを確認した。次にこれらの合金の延性(塑性変形能)を,同様に作製したD0_<22>単相のAl_3Ti化合物と圧縮試験により比較した。その結果Er,Lu添加では塑性変形量はほぼ零で変わらなかったが,Sc添加によりこれが約3%にまで増加することが明らかになった。さらにy=0.5および0.75のSc添加合金を調製し,圧縮試験に供した結果,塑性変形能はSc添加量に伴って増加し,y=0.5で6%,y=0.75で11%変形することが示された。しかしアーク溶解の鋳塊では鋳造欠陥や凝固偏析による不均質な組織のため材料本来の延性を示さないと思われたので,従来本化合物でほとんど行われていない熱間加工を試みた。加工条件を調査するため高価なSc添加試料ではなく,Al_<74>Ti_<26>およびAl_<65>Cr_9Ti_<26>合金を試料とし,1100〜1200℃の種々の温度,加工率で約10^<-3>Paの真空中で恒温鍛造を行った。その結果1175℃で55%以上の加工率で鍛造すれば完全な再結晶組織が得られ,凝固偏析もほとんどなくなることが分かった。そしてこれに伴いAl_<65>Cr_9Ti_<26>合金の塑性変形能も4%から9%へと増加した。さらに地金純度の影響を調べた結果,高純度素材を使用することにより上記鍛造材の塑性変形能は約2倍となった。
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