著者らは、既に、硬質材料一般の曲げ破壊について、σ_m=ψK_<IC>S_<mf>^<1/2>式を理論的に導出している。ここで、σ_mは3点曲げ強さ、ψは理論的にV^<-1/2>φで表せる係数(Vは試片の応力負荷体積およびφは試料間でほぼ一定と考えられる係数)、K_<IC>は破壊靭性およびS_<mf>は曲げ破壊後の破片の持つ全破面の総マクロ的面積である。また、代表的な硬質材料であるWC-10mass%Co超硬合金およびSi_3N_4基セラミックスについては、同式の示す通りσ_mとS_<mf>^<1/2>との間には直線関係が成り立ち、それらの傾き(ψK_<IC>)の比は、両試料の実測のK_<IC>の比とほぼ一致すること、ψは試料によらずほぼ一定であることなどを明らかにしている。本研究は、σ_m-S_<mf>^<1/2>回帰直線の傾き(ψK_<IC>)が、上式の示す通りV^<-1/2>に比例して変化するかどうかを実験的に検証することを目的として行った。具体的には、異なるV(240〜640mm^3)を持ったWC-10mass%Co低炭素2相超硬合金試片を各5本作製して3点曲げ試験を行い、σ_m、S_<mf>およびK_<IC>を測定し、σ_m-S_<mf>^<1/2>関係直線の傾きのV依存性を調べた。得られた結果は以下の通りである。 (1)S_<mf>は、Vの値に関わらず、σ_mが増加するにしたがって増大した。また、ある一定のσ_mの下でのS_<mf>は、Vの増大とともに大となった。 (2)Vの値に関わらず、σ_mとS_<mf>^<1/2>との間には直線関係が成り立った。 (3)試片間のσ_m-S_<mf>^<1/2>回帰直線の傾き(ψK_<IC>)の比は、上式により理論的に示唆される通り、試片間のV^<-1/2>K_<IC>またはV^<-1/2>の比に良く一致することが分かった。したがって、Vの値に関わらず上式が成り立つことおよびφの値がほぼ一定であることが明らかとなった。
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