研究概要 |
立花は、ストリングモデルにおける電子の能動的流れを、領域密度汎関数理論の立場から研究するプログラムを用いて、領域電子化学ポテンシャルの差が原子核の動きを引き起こす化学反応進行のドライビングフォースになることを、いくつかのイオン-原子系において実証した。さらに、この領域化学ポテンシャル非相等性原理に基づく化学反応ダイナミクスの特徴を少数多体系の非線形動力学の観点から研究した。特に、分子振動のホロノミーから生じるゲージ場の量子化、電子状態と原子核の振動運動および全系の回転の相互作用に基づく幾何学的位相構造など、数値計算を援用し、トポロジー、ならびに微分幾何学的アプローチを活用し、古典力学的統計性と量子力学的統計性との関連を理論的に研究した(以上、立花担当)。川内は、先にポリビニルピロリドン(PVP)やポリビニルアルコール(PVA)などの親水性高分子ゲルの膨潤度に顕著なイオン種依存性があることを実験により明らかにしている。このことは,カチオンは水のアクセプター性を増し、アニオンは水のドナー性を増して,水-親水性高分子間の相互作用に影響を及ぼしているためと解釈している。この事を、ストリングモデルを応用し分子レベルで明らかにするために、abinitio分子軌道計算を行った。PVPやPVAのモデル低分子として、それぞれN-メチルピロリドンとメタノールを選び、F-およびNa+イオンの水クラスターとの相互作用エネルギーをHF/6-31G^<**>レベルで計算した。計算の結果、F-の存在は水分子のドナー性を増し、Na+の存在は逆に水分子のアクセプター性を増して、高分子と水間の相互作用に影響を及ぼしていることが明らかとなった。
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