研究概要 |
本研究者は、十年以上も前からルイス酸としての有機アルミニウム化合物の化学に取り組んでおり、数多くの研究データを蓄積している。これらの知見をもとに「二点配位型ルイス酸」としての二点配位型有機アルミニウム反応剤の創製に取り組んだ。すなわち、適当な位置に二つのフェノール性水酸基を有する化合物を二座配位子として用い、これをトリアルキルアルミニウム、2当量と反応させることにより、二つのアルミニウム原子が望ましい原子間距離に位置し、二点配位が可能な有機アルミニウム系ルイス酸を作り上げた。この二点配位型ルイス酸を用いると、4-tert-ブチルシクロヘキサノンのカルボニル酸素の二つの非共有電子対をうまく配位させることができ、続いてこのケトン-アルミニウム錯体にアルキルリチウム化合物を加えることにより、高いエクアトリアル選択性が獲得できた。一方、この二点配位型アルミニウム反応剤に2当量のケトンを加え、その後、アルキルリチウムを加えても何らエクアトリアル選択性が得られないことから、ケトンを1当量加えた場合には、二つのアルミニウム原子がケトンカルボニル酸素の二つの非共有電子対にうまく配位していることが示唆された。また、α,β-不飽和アルデヒドを二点配位型アルミニウム反応剤に配位させ、その後、アルキルマグネシウム化合物を加えることにより、共役付加体が優先して得られることを見い出した。通常、アルキルマグネシウムは、α,β-不飽和アルデヒドに1,2-付加をするため、二点配位型ルイス酸を活用することにより、本来の選択性を換えることに成功した。
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