ポリスチレンラテックスなどの表面に電荷を有するコロイド粒子は、分散液中で粒子間の静電的相互作用により粒子が規則正しく配列するコロイド結晶を形成する。このコロイド結晶の構造性を超小角X線散乱測定により、調査したところ、その粒子間距離はイオン強度の低下とともに一旦増加した後減少に転じることが確認された。これは新旧コロイド理論のいずれにも反する新たな発見である。様々な粒径、電荷密度を有するラテックス粒子に関して系統的に検討したところ、この現象の普遍性が確認できた。また、コロイド結晶構造の詳細な解析により、この現象はコロイド結晶構造の固液相転移であることが判明した。コロイド理論の基礎によれば、イオン強度の変化と温度変化は対等に扱えるため、上記結論が正しければ、分散液の温度変化によっても同様の現象が観測されるはずである。この見地に立ち、超小角散乱装置に温度制御セルを組み込んだ。+200〜-190の範囲で厳密に温度制御可能であることを確認し、測定を行った。
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