本研究は、インゲンマメの小葉運動における葉枕表面の電位変動が受光反応に由来するのか、あるいは細胞伸縮に見られる機動反応に由来するのかを明らかにするために行われた。N_2ガス充満(O_2濃度:0〜5%)した特注のチャンバー(50×50×70cm)にポット植えの植物体をおき、呼吸抑制条件下における小葉の傾斜反応および葉枕の上・下部表面の電位変動を調べた。その結果は以下のとおりである。 (1)暗黒下における呼吸抑制効果 N_2ガスの充満による小葉の傾斜変化はほとんど見られず、呼吸抑制の効果は認められなかった。しかし、葉枕の上部と下部表面の電位はともに、N_2ガスの注入とともにマイナス方向に約40mV変化し、注入の停止に伴なってプラス方向への回復を示した。 (2)白色光照射における呼吸抑制の効果 白色光照射(2.4mM)による小葉運動にN_2ガスによる抑制効果が認められた。とくに照射開始10〜20分の間で著しかった。上部の電位変動はプラス方向にわずかに変化したこととは対照的に、下部においては照射開始後30分でプラス方向に100mV以上大きく変化することが認められ、呼吸抑制のない状態とは著しく異なった。 (3)3つの波長域光の照射における呼吸抑制の効果 可視光におけるRed(>600nm)、Green(500〜600nm)およびBlue(<500nm)の照射による小葉の運動において、RedとBlueではほとんど動かず、Greenでわずかに動くことが認められた。この傾向は呼吸抑制のない状態とほぼ同様であった。しかし電位変動は3つの波長域光で特有の反応が見られ、さらに呼吸抑制のない状態と著しく異ることから、葉枕内部の反応を示しているように思われた。
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