本研究は、アグロバクテリウムの感染により植物組織の内生ホルモンレベルが変動することを利用し、新たな再分化系を開発することを目的とした。 1.ニホンナシ品種の休眠芽から、茎頂培養系を確立した。この茎頂培養系において、培地の支持体として、ジェランガムを用いた場合、寒天に比較し、旺盛な成長が得られることがわかった。また不定芽の増殖は、6-ベンジルアミノプリンに比べ、低濃度のTidia zuronが効果的で、ジフェニルウレア系サイトカイニンの有効性が認められた。 2.数種のナシ栽培品種及び野生種の実生から、茎頂培養系を確立し、増殖の旺盛な系統を選抜した。このうち野生種由来の茎頂で、旺盛に増殖する系統を見出した。 3.リンゴ及びニホンナシ品種の種子を休眠打破し、子葉を胚軸基部で切断した外植体を用いて、シュートの再生を行った。この場合にも、培地の支持体とサイトカイニンの種類は、茎頂培養系において効果が見られた条件で、相当数のシュートが得られた。 4.本研究ではさらに、これらの茎頂培養系とシュートの再生系を用い、マグロバクテリウムの感染を行った。しかし、今年度、我々の研究室では震災により、実験室と培養室が大きな被害を受け、しばしば中断を余儀なくされ、除菌適期の把握ができなかった。現在これらの実験を継続中である。
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